うまく坐れているかを問わず、ただ坐る曹洞宗の坐禅の時間

曹洞宗の坐禅とは―「うまく坐れたか」を問い続けない修行

「これで合っていますか?」と聞きたくなるとき

曹洞宗の坐禅を行う本堂内の静かな空間(耕雲院)

初めて坐禅を体験する方の多くは、戸惑いの中にいます。
「背筋はこれで伸びているだろうか」「呼吸の数え方は合っているのか」「雑念が消えないけれど、失敗ではないだろうか」。

眠気に襲われれば自分を責め、足の痛みに意識が向けば集中力のなさを嘆く。
私たちは日常生活と同じように、坐禅の時間にさえ「正解」を求め、「正しく坐れている自分」を評価しようとしてしまいます。

しかし、曹洞宗の坐禅において、
その「これで合っていますか?」という問いそのものが、すでに坐禅の入り口です。

なぜなら、坐禅とは「理想の状態になること」ではなく、
自分が今、どのような状態にあるのかに気づくことから始まる営みだからです。

曹洞宗の坐禅とは、姿勢や呼吸を整える技法ではなく、「正しく坐れているか」を判断し続ける心から離れていく修行です。

なぜ曹洞宗では「正しい坐り方」を教えきらないのか

曹洞宗の坐禅では、姿勢や作法については最低限のことしか示されません。
それは、坐禅を「目的を達成するための技術」にしてしまわないためです。

一般的な習い事であれば、「できた/できない」という評価が上達の指標になります。
けれど曹洞宗は、坐禅を成果のための「道具」にすることを避けてきました。

もし「正しい坐り方」が完璧な技術として定義されてしまえば、
坐禅は自己採点の場になり、「うまく坐れたかどうか」を競う時間に変わってしまいます。

曹洞宗の坐禅は、
「坐っている姿そのもの」に価値を置く構造を選びました。

だからこそ、「教えきらない」こと自体が、
修行者が「自分なりの正解」に執着するのを防ぐ知恵となっているのです。

坐禅がうまくいっているかを、気にしてしまう心

風が止んだ後に静まった水たまり(放下著・判断を手放すイメージ)

坐禅中に「雑念が出た」「眠くなった」と感じる。
あるいは「隣の人は静かに坐っているのに」と比較してしまう。

これらは、私たちが日常で繰り返している
判断・評価・反芻思考の癖が、そのまま坐禅の場に持ち込まれている姿です。

曹洞宗では、これらを「失敗」とは見なしません。
ただの「状態」として、そのまま眺めます。

心は、水を入れた器のようなものです。
揺らせば波が立ちますが、静かに置いておけば、泥は自然と沈んでいきます。

大切なのは、波立つ自分を否定することではなく、
「今、波が立っているな」と気づき、
その判断をそっと手放すこと—放下著です。

👉禅問答もまた、答えを出すためではなく、判断しようとする自分自身に気づくためのやり取りです。禅問答については、こちらの記事で詳しく触れています。

道元が「坐ることそのもの」を完成形にした理由

曹洞宗の開祖である 道元 は、
「修証一等(修行と悟りは一つである)」という思想を説きました。

厳しい修行の先に、いつか悟りがある。
そうした成果主義的な発想を、道元は手放しました。

坐禅をしようとする心、
そして今まさに坐っているその姿そのものが、
すでに仏としての完成形であると考えたのです。

この思想は、只管打坐(ただひたすら坐る)という言葉に集約されます。
何かを得ようとしない。
結果を目的にしない。

ただ、今この瞬間に成りきる。
それは、結果ばかりを追い続ける現代の生き方に対する、静かな問いかけでもあります。

👉禅の教えの歴史については、こちらで詳しく触れています。

静まらない坐禅、眠くなる坐禅、雑念だらけの坐禅

「禅とは無になることだ」という誤解は根強くあります。
しかし、「無になろう」とすること自体が、すでに一つの執着です。

曹洞宗の坐禅では、
静まらない心も、眠気も、雑念も、
すべてが「坐っているという事実」の一部です。

坐禅は、心を無理に整える時間ではありません。
むしろ、「整わない自分」と共に坐り続ける時間です。

その逆説の中で、
自分を否定せず、ありのままを受け入れる柔らかさが、
少しずつ育っていきます。

曹洞宗の坐禅が、現代人に向いている理由

私たちは、即答・評価・成果に追われる社会を生きています。
常に何者かであろうとし、役割を演じ続けています。

マインドフルネスが「集中力」や「効率」を語るのに対し、
曹洞宗の坐禅が差し出すのは、徹底した「非評価の時間」です。

  • 判断されない時間
  • 何者にもならなくていい時間
  • 自分を説明しなくていい時間

坐禅は、溢れ続ける思考の器を、
一度そっと空にするための余白なのです。

坐禅は、評価されない時間である

坐禅は、うまくなるものではありません。
何も起きなくても、心がざわついたままでも、
「今、ここに坐っている」という事実だけが、確かな重みを持っています。

もし、あなたがこの評価されない時間を必要としているなら、
富士山麓にある 耕雲院 を、一つの選択肢として思い出してみてください。

ここでは、永平寺 での修行経験を持つ僧侶のもと、
数時間だけ日常のノイズから離れ、
坐禅・呼吸・静けさの中に身を置くことができます。

それは特別な体験というよりも、
忙しさの中で見失いがちな「本来の自分」に
静かに戻るための場所です。

何かを得ようとせず、
ただ坐る。
その時間が、日常の景色を少しずつ澄ませていくはずです。

坐禅とは、心を調える方法ではなく、調えようとしている自分に気づくための時間なのです。

👉近年はマインドフルネスという言葉も広く知られるようになりましたが、禅の坐禅は、集中や効果を目的としない点に特徴があります。 禅とマインドフルネスの違いについては、こちらで整理しています。

アクセス・費用・予約方法山梨県都留市にある禅寺・耕雲院の境内と本堂の外観

    • 所要時間: 禅リトリート:3〜4時間
    • 料金: 10,000〜15,000円(税込)
    • アクセス
      • 新宿 → 大月 → 東桂(約90分)
      • 河口湖エリアから車で約35分
      • 富士急行線「東桂駅」から徒歩約8分
    • 言語: 日本語・英語でのご案内が可能です
    • 予約: 事前予約制

この場を預かる者として—副住職・河口智賢より

耕雲院 副住職 河口智賢(かわぐちちけん)の紹介写真

富士山麓、山梨県都留市。
この静かな寺で、日々流れていく時間を預かっているのが、耕雲院副住職の河口智賢です。

これまで、大本山・永平寺での修行をはじめ、曹洞宗の教えに身を置きながら歩んできました。
また、映画『典座 –TENZO–』では、修行僧・典座の日常を通して、言葉にしきれない禅の営みを映像として伝える機会にも恵まれました。
けれど、ここ耕雲院で何より大切にしているのは、そうした経歴や肩書きではありません。

目の前の人と、同じ時間に坐ること。
同じ静けさに、身を置くこと。

坐禅や写経、ヨガ、精進料理。
どれも特別なことではなく、ただ「今の自分の状態」に気づくための、シンプルな実践です。
私は、その時間が流れていく場を整え、ともに坐り、ともに過ごしています。

禅は、限られた人のための難しい修行ではありません。
日々の暮らしの中で、立ち止まり、呼吸に戻り、
評価や判断から少し距離を取るための、生き方そのものだと感じています。

その思いから、子ども食堂の運営やオンライン坐禅など、
日常の中に禅の精神が静かに息づく取り組みも続けてきました。

世界各地から訪れる方々を、この富士山麓の寺でお迎えできること。
それは、禅の教えが今もなお、人の中で生き続けていることを確かめ合う時間のように思えます。

坐禅という、評価されない時間。
ごくシンプルな実践の中で、
深遠でありながら、誰にでも開かれた静けさを、
ここでそっと分かち合えたらと願っています。

体験者の声

「心の奥に“静けさの余白”が生まれました。」
日常では味わえない深い静寂に包まれる時間でした。自分の呼吸が“帰る場所”になる感覚を体験できました。

「坐禅と法話が、自分の生活を見直すきっかけに。」
難しい言葉ではなく、日常の中の“禅”を優しく伝えてくださる方でした。家でも呼吸を意識するようになりました。

「ヨガと坐禅の組み合わせが心地よかった。」
身体をほぐしてから坐ると、自然に呼吸が深まりました。富士山の空気と、河口さんの穏やかな声が印象的でした。

 

FAQ(よくある質問)

初めてでも大丈夫ですか?

もちろんです。姿勢や呼吸法は最初に丁寧にご案内します。

服装に決まりはありますか?

動きやすい服装であれば問題ありません。

写経や精進料理は全員参加ですか?

写経は体験に含まれますが、精進料理はオプションです。ご希望の方のみご予約ください。

坐禅中に眠くなってしまったら?

眠くなるのは自然なことです。眠気に気づくことも禅の一部です。焦らず、呼吸に意識を戻してみてください。

予約はどこからできますか?

こちらのお問い合わせフォームからご予約ください。

戻れる場所としての坐禅

夕暮れの耕雲院の灯り(戻れる場所としての坐禅)

坐禅は、特別な人のためのものではありません。
調子のいいときだけ坐るものでもありません。

むしろ、
考えすぎているとき、
評価から離れたいとき、
何も決めたくないときにこそ、坐るものです。

曹洞宗の坐禅は、
「うまく坐れたか」を問い続けない修行として、
今も静かに続いています。

答えを出さないまま、ただ坐る。
その時間に、そっと身を置ける場所があること。
それ自体が、現代にとっての大きな支えなのかもしれません。

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