
富士山のまわりを旅していると、ふとした瞬間に「静けさが深くなる場所」に出会うことがあります。
観光地のにぎわいを離れ、川の音や木々の揺れる気配だけが聞こえるようになると、
まるで富士山そのものが息をしているように感じられる—
そんな場所です。
その静けさを求めて歩くと、地図には大きく載っていない町や滝、
古い寺や文化財に行き着きます。
かつて巡礼者が旅の途中で休息し、心を整えた場所でもあります。
本記事では、富士山麓で「静けさと深さ」を味わえる場所と、そこで生まれる体験について紹介していきます。
富士山周辺での禅体験の全体像については、
👉 富士山の麓で叶える禅体験ガイドでも詳しくまとめています。
富士山麓観光の“本当の魅力”とは?
「富士山周辺の観光」と聞くと、多くの方が思い浮かべるのは、
河口湖・本栖湖・富士吉田といった定番エリアではないでしょうか。
もちろん、どれも素晴らしい場所です。
しかし、寺の副住職として参拝者のお話を伺っていると、よくこんな声も耳にします。
- 週末はどこも常に混雑していた
- 写真スポットは順番待ちでゆっくり出来なかった
- 車移動は渋滞が多く、運転で疲れてしまった
- 気づけば「観光が作業」になっていた
富士山の姿は美しいのに、心はなぜか落ち着かない—。
そうしたギャップを抱えたまま帰路につく方も少なくありません。
一方で、富士山の東側には、
「混雑しない富士山」「静けさと文化が残る富士山麓」という、もうひとつの顔があります。
とくに、都留市・忍野・道志村といったエリアには、
- 富士山の湧水や森の気配に触れられる自然
- 巡礼や祭礼が息づく歴史・文化
- 禅や温泉など、心身を整える体験
が程よい距離感で共存しており、
「観光」ではなく「旅」と呼びたくなる時間が流れています。
👉 「日本各地の禅寺もあわせて知りたい」という方には、お寺で出会う禅もご覧ください。
観光バスのルートから一歩外れると、富士山麓の旅は変わる
富士山観光の混雑の原因は、実は「人気スポットそのもの」ではなく、導線にあります。
多くの旅行者がガイドブックやSNSで紹介されたルートをなぞるため、
どうしても同じ時間帯に、同じ場所へ、人が集中してしまうのです。
しかし、そこからほんの数キロ、あるいは一駅だけ視点をずらしてみると—
- 人の気配がふっと薄れ
- 富士山麓の風の音や川のせせらぎが耳に入り
- 「ああ、ここにも富士山は息づいていたのだ」と思わせる景色
に出会うことができます。
その象徴のひとつが、耕雲院のある山梨県都留市(つるし)です。
巡礼者の休息地:富士山麓・都留市という町
富士急行線「富士山駅」から電車で約15分。
新宿からも約90分とアクセスしやすいにもかかわらず、
都留市には、観光地の喧騒とは少し違う、「生活の中に静けさが溶け込んだ時間」が流れています。
都留市はかつて、富士山へ向かう巡礼者の宿場町として栄えた場所です。
富士講の人々は「富士みち(富士道)」と呼ばれる道を進み、
その途中でこの町に立ち寄り、身体と心を整えてから山に向かったと言われています。
- 川が流れ、谷が開けた地形のやわらかさ
- 谷村城下町としての歴史を感じる古い町並み
- 由緒ある寺院や文化財が点在す“一歩奥の富士山麓”
富士山を「見る」だけではなく、
富士山麓で暮らす人々の時間や祈りに触れたい方にとって、都留市は非常に相性のよい土地です。
都留市のなかでも、とくに禅とゆかりの深いスポットは、耕雲院周辺のご案内にもまとめています。
太郎・次郎滝—富士山の水が落ちる“静寂の名所”

まずご紹介したいのが、耕雲院の裏手にひっそりと佇む、「太郎・次郎滝」です。
「富士山麓らしさ」がぎゅっと凝縮された場所でもあります。
- 富士山に降った雪解けの水が、長い時間をかけて地下を流れ、滝となって現れる
- 滝の音と鳥の声だけが響き、深呼吸したくなる空気が広がる
「ただ立っているだけで、心が静かにほどけていく」感覚を、ここでよく味わいます。
最近は写真映えするスポットが注目されがちですが、
太郎・次郎滝は、どちらかと言えば”心が調う滝”です。
観光の途中、少し足を止めて水の音を聞くだけで、
富士山麓の旅のスピードが、自然と一段、静まり返っていきます。
ミュージアム都留—葛飾北斎の「祭礼幕絵」に出会う

都留市の文化を語る上で外せないのが、「ミュージアム都留」です。
ここには、富士山麓観光の中でも特に珍しい、葛飾北斎が下絵を描いた祭礼幕絵が所蔵されています。
この幕絵は、単なる美術作品ではなく、
都留市の「ふるさと時代祭」というお祭りのために実際に使われてきた、“生きた文化財”です。
- 北斎晩年の力強い筆致が、目の前で感じられるスケール感
- 東京の大きな美術館でもなかなか出会えない作品を、落ち着いた環境で鑑賞できる贅沢
- 富士山麓の歴史・信仰・暮らしが一枚の幕に凝縮されたような世界
富士山の絶景写真だけではなく、
「この土地でどんな祭りが行われ、どんな祈りが捧げられてきたのか」を知ることは、
旅の解像度を一段と深くしてくれます。
禅寺の建築や空間の意味に興味がある方には、
👉 禅寺建築がつくる「静けさ」のデザインもあわせて読むと、日本の寺院の見え方が少し変わってくるかもしれません。
富士山麓で“心を整える旅”をする:耕雲院の禅リトリート
耕雲院は、1398年に開山した歴史ある禅寺で、
かつては富士山へ向かう巡礼者が「最後に心を整えた寺」とも言われてきました。
現在は、国内外の方に向けて、
「富士山麓で心と体を整える禅リトリート」を開催しています。
- 富士山の麓・都留市にある、曹洞宗の禅寺
- 英語でのご案内も可能で、海外からの参加者も多い
- 「観光ではなく、旅の“核”になる体験だった」との声を多くいただく
禅リトリートのプログラム全体像は、体験プログラム詳細からもご覧いただけます。
ヨガ & ストレッチ—まずは“体”から整える
禅の修行というと、いきなり長時間じっと座るイメージを持たれる方も多いのですが、
耕雲院の禅リトリートでは、5〜10分ほどのヨガやストレッチから始めます。
- 簡単なミニフローで、背骨と呼吸の動きを感じる
- 軽い太陽礼拝を通して、身体に血流を巡らせる
- 無理なく、マイペースでできる範囲の動き
坐禅は「身体を無視して心だけを落ち着かせる」ものではありません。
むしろ、身体が整うと、自然と心も座る場所を見つけてくれる—その前準備として、ヨガやストレッチを取り入れています。
坐禅—“考える”から“気づく”へ

坐禅が初めての方には、
姿勢・目線・手の置き方・呼吸の仕方まで、私が丁寧にお伝えします。
- 1回10〜15分程度の短い坐禅を、参加者の様子を見ながら行う
- 脚が痛い方には椅子坐禅もご用意
- 「考えが浮かんでも大丈夫」という前提で、安心して座れる時間をつくる
- ご希望があれば、英語での説明も対応
坐禅の基本については、「禅宗の坐禅とは?初めての方向けガイド」で詳しく解説しています。
坐禅は「何も考えてはいけない」修行ではありません。
思考を押さえつけるのではなく、
「浮かんでは消えていく姿」を、少し距離をおいて眺める練習だと考えています。
その練習は、
仕事や家庭、日常生活の中での「迷い」と向き合うときにも、静かに効いてきます。
写経—一文字ずつ、“今”に戻る
耕雲院の禅リトリートでは、般若心経の写経も体験していただけます。
- 文字を一つひとつなぞるうちに、雑念がすっと脇に退いていく
- 筆や紙の手触り、墨の香りを通して、感覚が研ぎ澄まされる
- 終わった後、驚くほど心が静かになっていることに気づく
精進料理—“整う食事”という体験

禅の世界では、食事もまた大切な修行のひとつです。
耕雲院では、富士山麓の季節の野菜を中心にした、シンプルで滋味深い精進料理をお出ししています。
- 動物性食材を使わないビーガン対応
- ご相談に応じてハラルにも配慮
- 器や盛り付けにも気を配り、目と心も満たされる
なぜ今、富士山麓で「禅リトリート」なのか
少しだけ、私自身の話をさせてください。
若い頃の私は、サーフィンやファッションが好きで、
「静けさ」とはほど遠い生活をしていました。
そんな私が禅に出会い、永平寺での厳しい修行を経て、
今こうして富士山麓の小さな寺で、
国内外の方と坐禅をともにしているのは、偶然ではないと感じています。
現代を生きる多くの方が、
- 情報の多さに疲れ
- 仕事や家族の責任を抱え
- それでも「弱音はあまり吐けない」と感じています。
富士山麓・都留市にある耕雲院の禅リトリートは、
そんな方々にとっての重荷を下す場所でありたいと思っています。
- 観光で心がオーバーヒートしたとき
- 人生の岐路でふと立ち止まりたいとき
- ただ、何も判断せずに呼吸だけを感じたいとき
富士山の裾野のこの場所で、
一緒に座り、静けさを分かち合えたらうれしく思います。
ご自宅から参加されたい方には、オンライン坐禅も行っています。
参加者の声—“旅のハイライト”になる富士山麓の時間
実際に耕雲院の禅リトリートに参加された方からは、次のような声をいただいています。
- 「富士山麓観光の中で、ここでの坐禅の時間がいちばん心に残りました」
- 「観光ではなく、日本文化の“核”に触れたように感じました」
- 「ヨガと坐禅の組み合わせが、体にも心にも心地よかったです」
- 「写経が想像以上に深く、自分と向き合う時間になりました」
- 「英語での説明が分かりやすく、海外からの友人にも勧めたいです」
富士山の写真やお土産も旅の楽しみですが、
「あの時の静けさ」を連れて帰っていただけることが、僧侶としては何よりの喜びです。
富士山麓 モデルコース(半日・1日)
■ 半日コース(都留市集中・禅リトリート中心)
- 1.「富士山麓観光の中で、ここでの坐禅の時間がいちばん心に残りました」
- 2.ミュージアム都留で北斎の幕絵に出会う
- 3.耕雲院の禅リトリート(午前または午後の回)
「静けさ × 文化 × 禅体験」をコンパクトに味わいたい方におすすめです。
■ 1日コース(“整える旅”向け)
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- 10:00 ミュージアム都留で北斎の幕絵を鑑賞
- 11:00 太郎・次郎滝で自然の静けさに触れる
- 13:00 耕雲院で禅リトリート(3〜4時間)
- 17:00 温泉(寄り道の湯など)で一日の締めくくり
「外の静けさ」から「内なる静けさ」へ移行していく1日です。
富士山麓の旅が、単なる観光ではなく、
自分自身を整える時間として心に残るはずです。
アクセス・費用・予約方法
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- 所要時間: 禅リトリート:3〜4時間
- 料金: 10,000〜15,000円(税込)
- アクセス
- 新宿 → 大月 → 東桂(約90分)
- 河口湖エリアから車で約35分
- 富士急行線「東桂駅」から徒歩約8分
- 言語: 日本語・英語でのご案内が可能です
- 予約: 事前予約制
- 禅リトリートのご予約ページよりお申込みください。。
混雑しない富士山こそ、“本来の富士山観光”
富士山の姿は、どの角度から見ても美しく、
その圧倒的なシルエットは、世界中の人々を惹きつけます。
けれども、旅を本当に意味あるものにしてくれるのは、
静けさ・文化・体験との出会いではないかと、私は思います。
- 巡礼者の足跡が残る、都留市の町並み
- 北斎が描いた幕絵に宿る、祭りと祈りの記憶
- 富士山の湧水が落ちる、小さな滝の前で深く息をする時間
- 禅の実践を通じて、心がふっと軽くなるひととき
どれも、富士山観光の「メインルート」からは、少しだけ外れた場所にあります。
「見る旅」から「感じる旅」へ。
その一歩を富士山麓・都留市で踏み出していただけたら、
耕雲院の副住職として、これほど嬉しいことはありません。
皆さまのお越しを、静かな山の麓でお待ちしております。
